伊勢物語を読むの著者宇都木敏郎が綴る徒然話、今回は「アニメ映画 借りぐらしのアリエッティ」です。世の中は驚きに満ち、日常の全てに興味がそそられます。人生を勉強と追求に掛け・・・2014年4月10日没

アニメ映画 借りぐらしのアリエッティ

アニメ映画 借りぐらしのアリエッティ

この夏に見た映画の中では、たいへんすばらしいものと感じた。

小指ぐらいしかない小人のアリエッテイ親子は、人間から泥棒して生きているのではなく、「借りぐらし」をしているのだと思い込んでいる。これは小人たちが生きていく信条である。しかしそんな生き方を(特に春さんという中年のお手伝いが代表する)人間は鼠のような生き物として許さない。小人たちも人間に見られたらすぐ引っ越さなければならないと恐れている。アリエッテイ父子が夜中に角砂糖一個とテイッシュ一枚を借りに出ていく所など、これを冒険といっているのが面白い。人間の家の持主のお婆さんは、かつてわが家に小人が住んでいたことを思い出し、人形の家ドールハウスを持ち出して懐かしがる。しかし春さんはアリエッテイの母を見つけてすぐ鼠駆除人に知らせてしまう。小人の少女アリエッテイは心臓が悪くて手術する予定の仲良しの少年と心を通じ、その助けを借りて母を助け出し、無事引っ越しを終わらせる。アリエッテイと少年との愛情あふれる別れなど感動的である。

かつて現世人類が地球を支配する以前、他の別の人類が残っていたことを我々は知っている。ネアンデルタール人などはその一つである。彼らは20万年前まで現世人類(クロマニヨン人)と共に暮らし、絶滅した。喉の発生構造が違っていたらしい。またジャワ島の近くには、1mくらいの背の低い人類がいたらしく、4〜5千年前まで生きていたという。そういえば、北海道にはコロボックルという小人の伝説が残っている。小人の昔話は多い。特にアイルランドには「白雪姫と七人の小人たち」等よく知られた昔話が残っている。そのような妖精という名の伝説は世界の各地にあり、日本にも「一寸法師」の昔話がある。「ゲゲゲの鬼太郎」など多くある日本の妖怪は、実は小人のことだったのではないだろうか。

「借りぐらしのアリエッテイ」は昔たくさんいた小人達のとぎれがちな記憶の中に残っている。欧米人に比べれば日本人は明らかに昔は背の低い民族であった。小人たちを憎んで追い回したり殺したりするのではなく、愛情をもって共に暮らすよう、この映画は訴えている。その意味でこの映画は我々人類が今まで、そして今なお憎みあい殺しあっている現状を批判している。

この映画はお伽話のように現在と関係なく観るのではなく、人間の生き方を批判する切実な問題として、考えるべきではないだろうか。